古代アンデスの為政者が身につけた衣装や装身具は、為政者の生存中及び死後における身分を示すシンボルだった。
-衣服は我々の身体を保護するだけでなく、身分や人となりを示す手段でもあった。
社会を構成する人々の間で、互いに同等或いは異なる存在であることを識別する必要が生じた頃から、衣服は性別や社会的地位、出身地、職業等を表すようになった。 今日においても、教会や軍隊の人々は、外的なシンボルである衣服によって、自らの所属や階級・等級を表している。
-あらゆる古代社会において、エリート階級は自らをその他の人々から区別する手段を用いた。 古代アンデスにおいても、指導者らは自身の地位階級に特有の衣装や装身具を身につけた。これらの指導者らは主な儀式を執り行っていたことから、衣装や装身具は単に彼らの立場を表しただけでなく、宗教的な暗示や権力の象徴を盛り込んだものであった。 指導者としての社会的地位や身分は、衣装や冠その他無数の装身具に表されていたのである。
-死を迎えた指導者らは、自身の世界観を表す副葬品と共に死後の世界へ旅立った。 神の子孫としての自身の立場を示していた儀礼道具と共に埋葬されることで、指導者らは死後の世界においても生前の身分を維持した。 為政者らは、その死によって天の世界を神と共有する「祖先」となった。
-冶金、染色、土器等の職人たちは、為政者らの生前や死後の衣装・装身具等の製作にその才能、技術、膨大な時間やエネルギーをつぎこんだ。 為政者の死後の旅が成功するかは、職人達の腕によるところが大きかったため、職人達は非常に象徴的なこれらの衣装や装身具の製作に専心した。